今できないだけ

2024年04月09日


みなさんは、ヨガのポーズはいくつあるか知っていますか?諸説ありますが、8,400万個もあるといわれています。


さかさまになったり、足を頭にかけたり....そんなポーズを初めて目にした時は、「ぎゃっ!無理!」と思わず声がでたものです。


私自身、もちろんできないポーズが今もたくさんありますが、昔と違ってポーズの受け取り方がずいぶん変わりました。自分ができないポーズや場面に遭遇した時に「今はできないだけ」と楽観的に受け取れるようになりました。


楽観的とは物事を「なんとかなるか」と脳天気に考えることでも「自分は特別だ」と思い込むことではなく「続けていればいつかできる時が来るだろう」と自分の可能性を信じることです。


「私はできない」だとそこで全てがストップしてしまうけれど、「今は、できないだけ」と思えば、取り組み始めた時点でもう目的地に歩き始めていることに気が付けます。


今はできなくても、「できようとする」あり方が、私たちを大きく変えてくれることをヨガは教えてくれています。


無理をしない、でもあきらめない。焦らない、でもさぼらない。そんな姿勢が新しい現実をつくってくれます。


日常のどんな局面においても、自分ができない時間、そのプロセスを「じっくり味わう」くらいの余裕ができれば、人生何をやっても楽しめるんじゃないかと私は思うのです。


今の私は、「ぎょ!」っと思うポーズをしている人を目の前に見たとき、その人にもきっと、できなかった時期があったことを想像します。そこには、怒りや嫉妬ではなく、敬意しか生まれません。


ヨガはポーズを完璧にやることを目的としていません。そうありたいという目標とできない自分、そのギャップを受け入れることがヨガだと思うのです。


「今はできないだけ」と自分のことが信じられるようになると自分だけでなく、ほかの人にも「やればできる力」があることを信じられるようになります。信じるということは、待つということ。信頼できるから、自分も他人も待てるのです。


効率や生産性を求められ、コスパ、タイパという言葉が流行する世の中、私たちは「待つ」ことの難しさに直面することが多いのではないでしょうか。


親子や夫婦のような関係であっても、相手のことを信じて待つというのはそう簡単なことではないものです。


マットの上での練習を通して、日々たくさんのことに気がつきます。だからヨガは面白いのです。


私は最近、趣味でブラジリアン柔術をはじめました。大人になってはじめる習い事っていいですね。「できないこと」にチャレンジできることは幸せです。いくつになっても自分にはまだ伸びしろと可能性があることを教えてくれるからです。あれも、これも、今はまだできないだけ。


「知らないこと」「できないこと」に溢れているこの時間をどっぷりと味わいながら、できるようになる自分を待つ時間を、楽しみたいものです。